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───コンコン
質素ではあるが質の良い扉を叩くと澄んだ音が響いた。
「総帝、漆黒の魔統者です。失礼しても宜しいでしょうか?」
「ええ、構わないわ」
扉の向こうから聞こえた了承の返事を聞きルミアは扉へと手をかけた。
開けて直ぐに目につくのは幾重にも積み重なった書類の山と真ん中の机で書類へと向かい合う一人の女性だった。
「マスター、報告致します。オーリャ討伐ですが依頼書に記載されていた10匹ではなく実際に は2万匹程の群れでした。」
「2万匹?オーリャは群れても数匹が精々な筈...これは調査した方が良いわね。」
忙しなく動かしていた手を止め顔を上げたのは20代半と年若いギルドマスター《レイ・ファミナ》。その容姿は整っており道行く人の目を引くであろうことは容易に想像出来た。
「調査、ですか。帝に指名致しましょうか?」
「そうね...無帝、闇帝、風帝に調査させなさい。
それと、総帝。貴方に世界政府から指名依頼よ。これを読んで頂戴」
「了解しました。」
ルイから手渡された依頼書を見ると確かに世界政府からの指名依頼となっていた。
依頼内容へと目を向けたルミアは書かれていた内容に目を見張った。
「マスタ ー...これは...!」
僅かに震えを帯びた声を発したルミアは目の前で柔らかな微笑みを浮かべたレイを見遣った。
「ええ、貴方への指名依頼はルイーダ学園へ通い素質のある者の選出...って言うのは建前で
一生に一度しかない学生を楽しんで来なさい」
依頼書の内容、それはルミアが長年夢見てきた″学園へ通うこと″。
普段は特に欲しがったりしないルミアが唯一願っていたことだった。
「...有り難うございます。マスター」
「お礼の言葉は要らないわ。その代わり優秀な人の選出、宜しくね?」
「はい。お任せ下さい。では僕はこれで失礼します」
例え任務だとしても願いが叶う。ルミアはいささか嬉しそうにマスター室を辞した。
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