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場を辞したルミアは足早に自室へと向かっていた。
夢を叶えられる嬉しさからか口元には自然な笑みが浮かんでおり雰囲気も柔らかだった。
────パタン
ルミアは自室へ入ると被っていたフードを外しローブを脱いだ。
途端に溢れるのはさらりと煌めく蒼銀の髪。顔は中性的でありながらも大人びており儚さも併せ持っていた。
「夢だった学園に通えるのですね…それも生徒として」
依頼書を眺めていたルミアはこの部屋へと近づいて来る気配を感じ顔を上げた。
基本的に総帝であるルミアの部屋に近づく者はいない。居たとしてもそれは帝やマスターだけである。
────コンコン
「総帝、一番隊隊長"炎帝"です。」
「どうぞ、開いていますよ」
扉を開け静かに入ってきたのは赤い色のローブを身に纏った炎帝だった
炎帝は執務机の前まで来ると歩みを止めた
「…ルミア、ローブを脱いでいたのか。駄目だとは言わないが素顔を見られないようにしておけ。何時誰が来るか分からないのだからな。」
「分かっていますよ、ただ気配は貴方のものでしたし必要は無いかと思いまして。フードを外して座られたら如何ですか?ルイ」
「…分かった」
ソファへと腰掛けた炎帝 はおもむろにフードを外した。まず目に付くのは燃えるような赤色の髪。そして男らしいが端整に整った顔立ちである。
彼──炎帝ことルイ・フィアネスは総帝であるルミアの親友であった。
「今日はやけに嬉しそうだな?なにか良い事でもあったのか?」
普段とは違うルミアの様子に気付いたルイはそう尋ねた
「そんなに分かりやすいですか…?良い事は確かにありましたが…」
「ああ、普段より雰囲気がふわふわしている。お前はそういうのが滅多に無いから分かりやすい。」
「そう、ですか…実は学園へ通える事になったのです」
ルミアは苦笑いを浮かべつつも浮遊魔法で依頼書をルイの元へと運んだ。
「学園に…アレスティア学園、俺が在籍している学園か。おめでとう、ルミア」
「ありがとうございます、ルイ。よろしくお願いしますね?」
「ああ、よろしく」
柔らかな雰囲気のなか会話を続けているとルイが立ち上がりローブを身に着けた。
「どうかされたのですか?」
「いや、そろそろ一番隊の訓練の時間だからな」
「そうでしたか…」
──ローブを身に着ける。それは気持ちを切り替えると共に親友から炎帝へと立場を変えたことを意味する。
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