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スーツの男が座るソファーに、
白髪の男が肩に担いでいた大きなナップザックを沈ませた。
小さな子供なら軽々入るほどの
ナイロン製の大きなバックのジッパー音をたてて
ひき下ろすと、シルバーのパソコンを取り出した。
黒いシートに腰かけ、
膝の上に開いたキーボードに指先を滑らせ始める。
無精ひげだらけの口元をゆがめ、
面倒くさそうに白髪の男は口を開く。
「珍しいね。
兄貴が、本なんか読んでるなんて、しかも児童文学とは」
イギリス、ヒースロー空港のトランジットロビーに
人気はなく、スーツの男とぼろきれをまとう男だけが、
窓の外で次のフライトの準備をする飛行機の群れと対面している。
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