もう一つのラスト

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何もない空中にタブレット一つで、 360℃の立体映像を産みだす技術は画期的だ。 それに、 高品質のものをただ並べただけという使い手のことを一切考えずに、 テクノロジーの進化を見せつけるような 下手な対抗意識や飾りばかりの、 ナルティシズムの塊みたいな製品とは一線を画している。 使用する人間のことを、ただひたすら考えて追及しているあの製品は、 創り手のぬくもりすら感じられた。 ああいった作り手の精神が息づいた製品は必ずヒットする。 あれはこの先とんでもない莫大な金を産む。 それをわかっていて、GEが製品が発売する寸前に ウィステリアの傘下に入る話を受け入れるとは思えない」 ようやく男は興味がこちらへと向いた。 さげすむ視線が、射抜く。 「何も知らないくせに。 ニートの分際で、何を言ってるんだ?」 失笑が降り注ぐ。 その様子に白髪の男はさも楽しげに声を上げて笑った。
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