キスフレ2nd kiss Vol.32(最終話後半)

6/6
600人が本棚に入れています
本棚に追加
/28ページ
「あの、あのその。 看板の意味がよくわからなくって。ごめん!!」 冷たい小栗の言葉に私は思いっきり頭を下げた。 「まじで死にかけたんですけど? 死んでたら呪い殺してたかもな」 もう何を言われても仕方がない。 あの雪の中待っていたという彼に、 なんと言えば許してもらえるのだろうか? 頭をもたげたままの私を、突然抱きしめた。 彼の胸の中に押し込められ、戸惑う。 「いいよ。全部、とけたから」 優しい声が響く。 彼の胸に鼻先を押し付けて、深く息を吸い込む。 大好きな彼の香りがする。 抱きしめるこのぬくもりは、今も変わらなくて、 この胸の鼓動も、変わらない。 『大切なものは眼には見えないんだよ』 私はその言葉を信じられなかった。 大切な愛の形をみたくて、私も彼に見せたいと願った。 でも、ようやくわかった。 その唇に触れなくてもいい、 愛の形がどんなものかも見えなくてもいい 愛の言葉も要らない。 だって、 ずっとずっと前から、 私たちの心には、見えない絆が刻まれている。 天井から降り注ぐステンドグラスの細かいガラスの色が、 床に様々な色合いを乗せていた。 長い絨毯の、その先にいる白い燕服を着た男性が、 ゆっくりと振り返って、私に向けて長い腕を差し伸べる。 ずっと変わらない笑顔がそこにある。 私は一つ頷いて、鐘の鳴り響く世界へと足を踏み入れた。 「キスしよっか?」 彼はつぶやき、瞼を閉じた。 キスフレ2nd kiss 完 (もう一つのラストがこの後に入ります)
/28ページ

最初のコメントを投稿しよう!