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煤けた鉛色の雲の間から、太陽の光が一晄差し込んだ。
流れる雲の動きは早く、
瞬く間に水色の絵の具を塗りたくったような
青空へと変わっていった。
光を反射する透明の壁で閉じられた広い空間で、
目の前に広がるまれにみる
青空を眺めることもせずにいる者に男は声をかけた。
彼と同じ、薄いブラウンの瞳に、
鼻筋の通った鷲鼻。
透明感のある白い肌を持っている。
同じ顔をした二人の男だったが、
ここへとやってきた一人の男は、
真っ白な髪と伸びすぎた顎髭。
血色の悪くやせぎすの身体には、すり切れた服を纏っている。
もう一人の黒い長椅子に腰かける男は、
髪を丁寧にまとめ、
つるりとした顎と、
鍛えられた身体に仕立ての良いスーツを身につけていた。
二人は、対極な位置を示す、富豪と貧民のカードだ。
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