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もう色々と考えるのがイヤになって、彼はため息交じりに涼のベッドの脇に腰を掛けると、手に下げたビニール袋の中に用意した間食を、涼に差し出した。
「どうぞ。何かお持ちすると申し上げましたでしょ?」
受け取った涼が、中から取り出した物に、目を大きくする。
「ご存知ですか? 焼きそばパン、と申します。炭水化物に炭水化物を挟むという、天下無敵の力技。考案者には畏れ入りますが、精はつきましょう。
本当は焼きそばが召し上がりたかったンでございましょうが……ある物はそれだけでしたので、御赦し下さいませよ。その代り、二つ買って参りました。腹はそれで十分膨れるかと……姫。姫?」
たかが惣菜パンだ。
別になんの変哲もない。
だが、両手にそれを一つづつ持って、急にこきりと頭を垂れた涼に、有坂は怪訝な顔をする。
涼は顔をあげなかった。
彼女の手元を窓から差し込む朝日が照らしだしても、それはそれは随分長い間、俯き、目を閉じたまま、微動だにしなかった。
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