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落ち込んだ様子の由佳里のところへ桜とロートが通りがかって声をかけてくる。
由佳里はいつものような笑顔を取り繕うことも出来ず、苦笑いで顔を向けた。
「…佐野さん、ロートさん………実は…錬金術が成功、しなくて…」
「調合の失敗、かぁ……ねぇ、ちょっとやってみてよ」
「あ、はい……えっと…コレをこうして…こうやって……」
ロートに促され、由佳里は再度挑戦する。
しかし、結果は見なくてもわかるものだった。
「……やっぱり、出来ない…」
「こりゃまた…見事な失敗で…」
流石のロートも苦笑いしか出てこないようだった。
「…あ、あの……もしかして…コレって、数値が間違ってるんじゃ…な、ないんでしょうか…?」
「え?数値…?でも、ゲルプは確かにコレで成功を…」
「あ、あの……ココの数値を……その、変えて、みたら……どう、でしょうか…」
「ココを?えっと…こうして、こうやって…………出来た!?」
桜に指摘された数値を直して調合をし直すと、錬金術は成功した。
由佳里は驚きが隠せなかった。
あんなに必死にやって出来なかったものが、出来たのだから。
「……多分、ゲルプが量の配分を間違えてたのね。大体、あの子はいつもそれで失敗してるし」
「でも、ゲルプは成功を…」
ロートの言葉に、由佳里は首を傾げる。
確かにゲルプは成功していたのだ。
「教えてる配分と、自分の配分が間違ってたのよ。それにも気付けないなんて…ゲルプらしい、って云えばゲルプらしいけど……困ったもんね」
「…でも、コレで成功したんだし……ゲルプも、喜んでくれるわ…良かった…」
「あの…良かった、ですね……田宮さん…」
「えぇ……ありがとう、佐野さん。貴方のおかげよ。…あ、そうだ……私の事は、由佳里でいいから。ね?」
「い、いえ、僕は何も……。あ、あの…じゃあ…ボクの事も、桜で…い、いい、です…」
「いいえ、貴方のおかげよ、桜。…それじゃあ、私、ゲルプのところに戻るわ。成功した事、教えてあげたいから」
由佳里は桜に礼を言い、ロートに会釈をするとゲルプの待つ部屋へと向かった。
「…良かった……由佳里さん、元気に、なってくれたみたい…」
「…ねぇ、桜?あんた、どーして間違いを教えてあげたりしたの?」
ロートが首を傾げて不思議そうに桜に聞いた。
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