第1章

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「え?だって…そんなの、当たり前じゃないですか……困ってる人の手助けをするのは、当たり前ですから……困ってる時は、お互い様、ってやつです」 ロートの問いかけに桜はきょとん、とする。 何を当たり前な事を聞くんだろう、と。 「そんな感情、この世界で生きていくのには必要ないわ。この世界では、自分がどれだけ他のものより上にいけるか……それだけを考えてればいいのよ」 「ロートさん…」 淡々と言葉を紡いだロートに、桜は何も言えなかった。 ・・・・・ 『…哀しそう……ロートさん、凄く哀しそうに感じる…。この世界ではロートさんが云う事が当たり前なのかもしれないけど…でも、そんなの哀し過ぎる……ロートさんだって、この世界に生きる他の人だって…本当は、きっと…もっと歩み寄りたいんだ……だけど、小さな頃からの教え、環境…それが阻んでる……。…哀しい、世界…』 ・・・・・ 「ゲルプ、ただいま。ねぇ、コレを見て?」 ドアを開けて由佳里が帰ってくる。 そして由佳里は出来上がった錬金術の成功物を差し出した。 「あ、由佳里、おかえりっ!…コレ?……あ、コレ…出来てる!? 由佳里、成功したの!!?」 「えぇ……やっと出来たわ」 「…良かった~……ホントに良かったね、由佳里っ!コレが出来れば、殆どの錬金術は出来るよ!ホント、良かったっ!!」 ゲルプは無邪気に子供のようにはしゃいで喜んだ。 由佳里は穏やかに笑って、その後少し切り出しにくそうに切り出した。 「あのね…?何だか、数値が間違ってたみたいなの。それを直したら成功したんだ」 「え!?間違ってた!!?…で、でも…由佳里、どうして間違いに気付いたの?」 「それは…佐野さん……あ、ううん、桜が、教えてくれたのよ。…如何したの?そんなに驚いて…」
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