そして二人は春を疎む

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楸は少し面白そうにこっちを見て、にべもなく言う。 「無理じゃないかな。今地球上にある核兵器なんかはきっと数え切れない、万単位くらいはありそうだけど、それで惑星一つ分の質量が消し飛ばせるかっていうと、ちょっと厳しいだろうね。母なる大地とはよく言うけど、結局のところ、人は星には勝てないよ」 「あー、途端に壊せる気がしなくなってきた」 「でしょー?」 「でもさ、核なら放射能もあるじゃん。それに将来的には、人類が地球を捨てるとかのSF展開があるかもしれないし」 ふむ、と少し俯いて考えている楸を横目で眺める。自分の好きな話題に浸っているコイツを見ているのは、わたしのテキトーな言葉をそれなりには真剣に考えているのがわかるので、少し愉快だ。 「少し考えたけど、放射能まみれでも生命が完全に死滅するとは思えないなー。死亡率は跳ね上がるだろうけど、ほら、黒光りGさんとか死にそうにないよね」 そして時々不愉快だ。思い出させるなよ、まったく。 「まーまー、そんな嫌そうな顔しないでって。ゴメンよ。そうそう、スタートレックだと対惑星レベルの兵器があったな。反物質とかのヤツ」 「反物質は聞いたことあるような気がするな」 「まぁ、そこまで話が進むとわからなくなるよね。多分ほかの星に移住できるくらいに発展してるんだろうし」 まあ所詮は仮定の話だ。きりがない。 「っていうか、そもそもなんの話だったっけ……」 「あー、みんな不幸になっちゃえって話だった」 思い返せば中々不謹慎な話題だが、まあ少し願うくらいいいだろう。とは言え、だいぶ話が逸れてたんだ。その間にもわたしたちの脚はちゃんと働いて、気づけばもう駅前だ。
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