第十五章 契り

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宿を発ち、再びルーナとの旅路を行き始めたエリックは、凄腕ネゴシエータの師としてのエリックにすっかり戻っていた。 涼しげに金穂の髪を風になびかせ、すらりと無駄のない体躯は相変わらず自分の前を悠然と歩く。 しかし少なくともルーナの頭の中はなかなか昨夜のその事実から離れられずにいた。 今自分の前を行くエリックを見ていると、あんなにも深く、優しく、抱かれた記憶はまるで夢の中の出来事みたい… でも、こうして歩いていても感じる。 この身体の中を、エリックが駆け抜けていったこと。 その痕跡が、こんなにもはっきりしたものだなんて、知らなかった。 その時また予告なくエリックがクルリと自分の方を振り向いた。 「…あっ」 「…なに見てるんだ?」 だって、…つい見ちゃうんだもん。 と、ルーナはまた頬を染めて下を向いた。 「俺に何か新しい発見でもしたか?ルーナ」 尋ねるエリックに、ルーナは不思議そうに視線を上げた。 「べっ・・・別に・・・エリックは?」 「…俺は、・・・ああ、そうだ、ひとつ見つけた。」 そう言うとエリックはいつものように口端をクッと持ち上げ、ルーナの胸元に人差し指を突きつけた。 「…恥ずかしがる時、全身が赤くなる。」 「…バカーーーーッ!!」 そのエリックの言葉どおりに、ルーナの全身が火を噴いたように朱に染まったのは言うまでもない。
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