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宿を発ち、再びルーナとの旅路を行き始めたエリックは、凄腕ネゴシエータの師としてのエリックにすっかり戻っていた。
涼しげに金穂の髪を風になびかせ、すらりと無駄のない体躯は相変わらず自分の前を悠然と歩く。
しかし少なくともルーナの頭の中はなかなか昨夜のその事実から離れられずにいた。
今自分の前を行くエリックを見ていると、あんなにも深く、優しく、抱かれた記憶はまるで夢の中の出来事みたい…
でも、こうして歩いていても感じる。
この身体の中を、エリックが駆け抜けていったこと。
その痕跡が、こんなにもはっきりしたものだなんて、知らなかった。
その時また予告なくエリックがクルリと自分の方を振り向いた。
「…あっ」
「…なに見てるんだ?」
だって、…つい見ちゃうんだもん。
と、ルーナはまた頬を染めて下を向いた。
「俺に何か新しい発見でもしたか?ルーナ」
尋ねるエリックに、ルーナは不思議そうに視線を上げた。
「べっ・・・別に・・・エリックは?」
「…俺は、・・・ああ、そうだ、ひとつ見つけた。」
そう言うとエリックはいつものように口端をクッと持ち上げ、ルーナの胸元に人差し指を突きつけた。
「…恥ずかしがる時、全身が赤くなる。」
「…バカーーーーッ!!」
そのエリックの言葉どおりに、ルーナの全身が火を噴いたように朱に染まったのは言うまでもない。
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