第一章 竜と人

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“凄腕のネゴシエータが来たらしい” という噂を聞きつけた若者たちが、村の小さな酒場に集まってきた。 「アンタが天才ネゴシエータのエリックかい?」 集まってきた若者の中で、いかにも腕っ節の強そうな太った少年が声を掛けた。 カウンターに座り、まだ覚えて程ない酒をぐいっとあおると、エリックは悠然と少年を見やった。 「…ああ。そうだ」 低い声で答えると。 「村の大人たちが話してたけどよ、すんげえ沢山の国や人と、竜とを契らせたって、ほんとか?」 「……まあな」 すると少年はエリックの足元にがばっと身を伏せ、 「なあ頼む!おいらをあんたの弟子にしてくれよ!」 と縋った。 「俺、一流の竜使いになって稼ぎてえんだ!頼むよ!」 太った少年の後ろに群がっていた別の少年たちも、次々にエリックの前へ進み出てわめいた。 「俺だってネゴシエータになりたい!」 「僕も!僕も弟子にして!」 みんな自分と同年代か少し下ぐらいの、若い男だ。 中には興奮したように高笑いしながら、おもしろ半分に顔を突っ込んでいる奴もいた。 エリックは不服そうに鼻を鳴らす。 ここにいる少年たちのほとんどが、単にネゴシエータになって金儲けがしたい、女にもてたいとかいう、短絡的で不純な動機なのが見て取れた。 お前たち。 竜を扱う仕事をなめるなよ? そうがなろうと思った瞬間。 「…なあアンタ!俺を弟子にしてくれよ!」 群がった少年たちの後ろでひときわ凛と通る声で叫んだ者がいた。
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