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群がっていた少年たちが一斉に声のする方を振り向いた。
エリックも、彼らの隙間からそちらを見ると、パブの入口に小さな少年が立っていた。
白い開襟シャツにきっちりとした革のベストを着こんだ、骨ばった華奢な身体。
半ズボンから覗いた膝小僧の色が白かった。
古びたキャスケット帽をすっぽりとかぶっている所為で顔はよく見えない。
少年たちはざわついた。
「コイツ誰だ?こんな奴村にいたっけか?」
エリックは何かに気づき、目を細めた。
そして静かに声を掛けた。
「……こっちへ来な」
痩せた少年は後ろ手を組みゆっくりとエリックに歩み寄った。
エリックの目の前に立つと、少年は少しだけ頭を垂れた。
「帽子を取れ」
「……。」
少年はその場でまごついた。
「都合が悪いか。…なら襟を開け」
えっ、と息を飲み、佇んだままの少年の細い腕を、エリックは乱暴に掴み引き寄せた。
「!」
エリックは無遠慮に少年の着ているシャツへと手を伸ばし、片側の襟をグッと開いた。
そしてその胸元を見るとすぐに目を反らし、クッと小さく喉を鳴らし笑った。
「…やはりな」
少年だけに聞こえる小声でそう呟くと、今度はわざと声を張り言った。
「見たところどうやらお前が一番見込みがありそうだ。日が沈んだら森の入口まで来な。簡単なテストをしてやるよ。弟子にするかどうかはそれで決める。」
それを聞いた取り巻きたちが不服そうに背後で口々に何か言っていたが、少年だけは驚いたように顔を上げ、エリックを見て立ち尽くしていた。
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