第二章 動き始めた運命

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不平をこぼしながら、散り散りに酒場を後にする少年たち。 エリックに「選ばれた」少年だけは、相変わらずまだ彼の目前にぼんやりと立っていた。 「どうした?嫌なのか?」 エリックが眉根を寄せ訊ねた。 「いっ嫌だなんてまさか!!」 叫んだ声が歓喜のせいか、上ずって震えていた。 「ほんとに?ホントに弟子にしてくれるの?」 「言っただろ。テストするって。それで上手くできたらの話だ」 「うん、分かった!俺きっと上手くやるよ!じゃ、あとで!」 キャスケットの下の翠色の瞳がキラリとした。 それから少年は弾かれたように店を飛び出して行った。 エリックは静かになった酒場のカウンターで、大きな溜息をこぼすと含み笑った。 「よう、流れ者のネゴシエータのにいさんよ」 一部始終を見守っていた店主が、カウンターに両肘をつき、ニヤつきながら声を掛けてきた。 「…アンタ、気づいたんだろ?あの子が ”女の子”だって事にさ」 「ああ。…。あの娘は村に住んでるのかい?」 「そうだよ。ダスティンってジィさんの孫娘さ。なんだって男のなりなんてしてたのかは分からねえけどなあ。村外れの小っちゃな掘立小屋で、二人暮らしだ」 「ふーん」 「で、何でまた、あの娘を選んだんで?」 「…」 エリックはグラスの中の琥珀色の酒を暫しぼんやりと眺めてから。 「…さあねぇ」 そう浮かない返事を返しながらも、エリックの瞳はある種の期待感を孕んでいた。
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