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ルーナは深く頭を下げたままぎゅっと目を閉じ、祈るように彼の返事を待った。
しかしエリックは。
「そいつは無理だな」
とあっさりダメ出しをした。
…頭を垂れたままのルーナの肩が、ガクリと脱力する。
「お前は竜の背で気を失った。…それが結果だ。…わかるな」
「竜の背に乗った!?…アンタ!なんちゅう危険なことを!」
いまや老人はエリックが正真正銘のネゴシエータだという判断を下したであろうが、その彼のネゴシエータとしての言葉に動揺した。
再びゆっくりと顔を上げたルーナは、諦めの表情などではなかった。
「上手くできなくてごめんなさい。…でも努力します!人の何倍も努力して、いつか必ずあなたの目に適います!!だから!!」
エリックも内心圧倒されるほどの、縋るような強い目だった。
センティネルも話していた通り、やはりこの娘はよほどの覚悟を持っている。
エリックが黙っていると、老人が声を震わせながらルーナに問うた。
「ルーナ。何故じゃ。何故そんなにまでして竜使いになる事を望むんじゃ!」
「ごめんね、おじいちゃん」
悲愴な声でそう問う老人にルーナの心が痛んだ。
がしかし。
「おじいちゃんが、あたしを竜の世界に関わらせたくないんだって、ずっと知ってた。でもあたしこのままじゃダメなの!おじいちゃんに何も恩返しができないまま、…自分の事、何も分からないまま終わりたくない!」
ルーナのその答えに老人の顔色が一変した。
「ルーナ。…ま、まさかお前…」
エリックと向き合ったままのルーナの大きな瞳に涙が溢れていた。
やがて寂しげな笑顔が紡がれ、言った。
「ごめんね。ずっと知ってたの」
ルーナは老人の方へは目を合わさず、意を決するように息を吸い込み、静かにその言葉を放った。
「あたしが、本当はおじいちゃんの孫じゃないって事」
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