第二章 動き始めた運命

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「ルーナ!」 老人の肩がわなわなと震えた。 …どういうことだ? と、エリックも眉を顰めた。 「…竜に運ばれし忌み子…村の人はみんなそう言ってる。…そうなんでしょう?おじいちゃん」 竜に運ばれし忌み子…!? エリックは目を見開きルーナを見た。 事の成り行きに驚きは隠せないが、ひとまずは話を聞いてみようと、静かに老人の言葉を待った。 老人は力なく椅子に腰掛け肩を落とすと、話し始めた。 「その通りじゃ。ルーナ。お前は…ワシの本当の孫ではない。 あれは今から15年前の事じゃった。 ある早朝、ワシが家の外に出ると、そこに一匹のでかい竜が立っとった。 真っ黒の身体に燃えるような赤い目をしとった。 よく見るとその口にちっちゃな幼な子を咥えとったんじゃ。 ワシは驚いた。 すると竜はこう言ったんじゃ。 “この子の名はルーナ。歳はふた歳(とせ)、いにしえの国よりワレが運び来た。何も問わず、この子を幾久しく大切に育ててほしい”とな。 あんな間近で竜を見たのも、話をされたのも初めてじゃったよ。 けれど、不思議とちっとも恐いとは思わなんだ。 竜はわしの腕に小さなルーナを下ろすと、瞬く間に飛び立った。 そして、それっきりじゃ」 老人の穏やかな声が、小さな小屋に朗々と響いた。
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