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「ルーナ!」
老人の肩がわなわなと震えた。
…どういうことだ?
と、エリックも眉を顰めた。
「…竜に運ばれし忌み子…村の人はみんなそう言ってる。…そうなんでしょう?おじいちゃん」
竜に運ばれし忌み子…!?
エリックは目を見開きルーナを見た。
事の成り行きに驚きは隠せないが、ひとまずは話を聞いてみようと、静かに老人の言葉を待った。
老人は力なく椅子に腰掛け肩を落とすと、話し始めた。
「その通りじゃ。ルーナ。お前は…ワシの本当の孫ではない。
あれは今から15年前の事じゃった。
ある早朝、ワシが家の外に出ると、そこに一匹のでかい竜が立っとった。
真っ黒の身体に燃えるような赤い目をしとった。
よく見るとその口にちっちゃな幼な子を咥えとったんじゃ。
ワシは驚いた。
すると竜はこう言ったんじゃ。
“この子の名はルーナ。歳はふた歳(とせ)、いにしえの国よりワレが運び来た。何も問わず、この子を幾久しく大切に育ててほしい”とな。
あんな間近で竜を見たのも、話をされたのも初めてじゃったよ。
けれど、不思議とちっとも恐いとは思わなんだ。
竜はわしの腕に小さなルーナを下ろすと、瞬く間に飛び立った。
そして、それっきりじゃ」
老人の穏やかな声が、小さな小屋に朗々と響いた。
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