第二章 動き始めた運命

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ダスティン老人の話は続く。 「なぜあの竜がワシのところへ幼な子をよこしたか?そんな事、どうでもよかった。ばあさんが死に、子供もなかったワシは幼な子のお前が、本当に愛おしくてならんかった。 ルーナを育てると言うワシに村人たちは皆猛反対じゃった。 漆黒の巨竜に運ばれてきた不吉な子供だ、きっとこの村に不幸をもたらすぞ、と。 だがワシはそんな戯言は聞き入れず、お前を本当の孫として育てたんじゃ。 村人たちはワシとルーナと関わり合いになるのを恐れ、除け者にしよったがの。 それでもお前がそばにいて、元気に笑ってさえいてくれれば、それだけで幸せじゃった」 そして噛み締めるように再び、 「本当に、幸せだったんじゃよ、ルーナ」 と言った。 老人は心底からそう思っているようだった。 身寄りのないこの老人が、竜が去ってより今日までどれほど心温かく満たされた日々を送ってきたことだろう。 エリックは項を垂れ、苦笑した。 センティネルの推しもあったが、やはり連れては行けないな。 この年老いた男から最愛の人間を奪いたくはない。 エリックがルーナに向き直り、その旨を告げようとしたとき、不意に老人がこう言った。
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