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「なあ…ネゴシエータの若旦那…エリックさん、と言うたかの?」
名を呼ばれ、エリックは老人を見た。
「ワシは…ずっとネゴシエータを好きにはなれんかった。竜と人をつなぐ仕事などくそくらえだとな」
「気にするな爺さん。アンタの気持ちは分かる」
エリックはフと笑みながら言った。
ネゴシエータは竜と人をつなぐ切り札。…関われば、ルーナを失うかもしれないとずっと恐れてきたのだろう。
「ルーナと竜を引き合わせるようなことには断じてすまいと、一切を避けてきたのに、…」
老人は寂しそうに笑った。
「お、おじいちゃん…」
老人が自分を愛するが故の苦悩の言葉は、ルーナの心を疼かせた。
「なのにこの娘は…知らず知らずのうちに自ら竜の世界に飛び込んでしまいよった。結局、運命には抗えなかったのじゃよ」
ダスティン老人はしわくちゃの手でエリックの両肩を掴んだ。
「エリック。名うてのネゴシエータよ。ワシからも頼む。どうか、ルーナを…アンタの弟子にしてやってくれまいか」
その申し出にエリックは思わず息を飲んだ。
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