第二章 動き始めた運命

18/23

1686人が本棚に入れています
本棚に追加
/430ページ
「なあ…ネゴシエータの若旦那…エリックさん、と言うたかの?」 名を呼ばれ、エリックは老人を見た。 「ワシは…ずっとネゴシエータを好きにはなれんかった。竜と人をつなぐ仕事などくそくらえだとな」 「気にするな爺さん。アンタの気持ちは分かる」 エリックはフと笑みながら言った。 ネゴシエータは竜と人をつなぐ切り札。…関われば、ルーナを失うかもしれないとずっと恐れてきたのだろう。 「ルーナと竜を引き合わせるようなことには断じてすまいと、一切を避けてきたのに、…」 老人は寂しそうに笑った。 「お、おじいちゃん…」 老人が自分を愛するが故の苦悩の言葉は、ルーナの心を疼かせた。 「なのにこの娘は…知らず知らずのうちに自ら竜の世界に飛び込んでしまいよった。結局、運命には抗えなかったのじゃよ」 ダスティン老人はしわくちゃの手でエリックの両肩を掴んだ。 「エリック。名うてのネゴシエータよ。ワシからも頼む。どうか、ルーナを…アンタの弟子にしてやってくれまいか」 その申し出にエリックは思わず息を飲んだ。
/430ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1686人が本棚に入れています
本棚に追加