第二章 動き始めた運命

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「ちょっと待ってくれ、爺さん。俺は」 エリックが困惑し言いかけると、 「虫のいい話なのはわかっとるんじゃ。ネゴシエータが大嫌いなんて言っときながら、今度はルーナを弟子にしてくれなんての。…」 老人は続けた。 「無論今もワシはネゴシエータっちゅうもんを信頼しとらん。だが……ルーナの言ったとおり、アンタは信頼に値する人間じゃ」 「…、」 額に手をあて、エリックは深い溜息をついた。 一流エリックが、見事テストに落第した人間、それも「女」を弟子に取る、か。 他のネゴシエータ共がどんな顔をするか見ものだな。 それを想像し、苦笑を禁じ得なかった。 クスクスと笑いながらしばし肩を揺らしていたエリックは真顔に戻り言った。 「分かった。引き受けよう。だが、いいか。これは特例中の特例だぞ。ルーナ。お前が言ったとおり、普通に努力してるだけじゃ、とても務まらないからな」
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