第二章 動き始めた運命

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─────── その迷いは、二年が過ぎた今も未だ、時折彼の心を過って疼かせる。 闇夜に沈んだ森の中、エリックは焚き火を枝で掻きながら、向かいに座ってじっと焔を眺めているルーナを見た。 どちらかといえば痩せ気味な体型は、歳相応の女性にしては少々物足りないことは否めないが、その分敏捷で、地竜の背に乗る事もたった数日でマスターしてしまった。 日々励む竜使いの修行にもしっかりとついてくる、男顔負けの根性があることも判った。 そして、何よりも曲がったことが大嫌いで、まっすぐなこの性格。 疑問に思ったことは、こちらの方が「続きは明日にしよう」と音を上げるまで徹底的に訊ねてくるし、事の外、竜に関しては度を過ぎる好奇心から、その分危険な目にも遭うことが多かった。 子山羊みたいに跳ね回っているかと思えば、じっと瞑想している猫のように何かを考え込んでいる事もある。 全くルーナはいつもくるくると騒々しい。 しかし、少しもうざったいとは感じない。 それがエリックには不思議でたまらなかった。
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