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暴れる竜の背中で、余裕綽々に微笑んでいるその人物。
ブルネットの髪をひとつに束ね、くるりと出した耳には金色のピアスが輝いていた。
腰のホルスターに短剣や鞭が提げられていて、竜が暴れる度にぶつかってガチャガチャと騒がしい音を立てた。
きれいな翡翠色の瞳が不敵に輝く。
「ほら!おとなしくなさいったら!」
遠目に見たら見間違うだろうが、驚くことにそれは一人の少女だった。
彼女は素早く腰のホルスターから鞭を取り出し、瞬く間に竜の首に巻きつけた。
慣れた手つきでその両端をぐいっと引っ張ると、竜は嘶く馬のように首を反らし、それからピタリと暴れるのをやめた。
フウフウとまだ息を荒げる竜の首を「いい子ね」と軽く叩き、彼女はストンと身軽に地面に飛び降りた。
少し汗をはらんだ顔を上げると藪の方へ眩しい笑顔を投げた。
「どう?見てた!?エリック!」
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