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エリック、と呼びかけた藪の中からガサガサと葉を鳴らし、現れた青年は彼女より少し歳上だろうか。
癖のない金髪を風に揺らし、不意に差し込んだ朝日に眩しそうに深海色の瞳を細めたその顔は、見るものを釘づけるほどの美貌。
すらりとした敏捷そうな体躯の美しい青年は、彼女を見るとクスリと笑った。
「まあな。最後だけはよかったぞ」
「ちょっ!最後だけって!酷い!」
憤慨したように彼女がそう聞くとエリックはクっと喉を鳴らし笑いながら答えた。
「俺だったらあんな派手なロデオショーになる前に、とっくに手なずけてる」
もっと憤慨したせいで、ほんのりと彼女の頬が染まった。
「ム・カ・ツ・ク~!無双の天才ネゴシエータと一緒にしないでよね!?」
エリックは破顔して笑うと、わざと恭しくお辞儀をしながら、
「これは失礼。未来の天才女ネゴシエータ・ルーナさま」
と答えた。
エリック。
そしてルーナ。
二人は“ネゴシエータ”と称される竜使いだった。
ネゴシエータとは、”竜と交渉し、盟約を取り交わす者” を意味する。
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