第一章 竜と人

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遥か昔より、この世界には人族と竜族が暮らしてきた。 人々は土地土地で国家を築き、様々な民族に分かれ生活していた。 また竜族も人に劣らぬ知性と強靭なパワーを有した生物としてこの世に君臨していた。 もともと竜と人はそれぞれの暮らしを確立し、互いに関わる事はなかった。 だがある時、人族の間で始まった国家同士の権力争いが激しくなる中、人々は自国を護り、またその勢威を拡大するために、強大なパワーを持つ竜を味方に付けることを思いついた。 一方竜族にも様々なものがある。 自在に空を駆る「飛竜」。 烈火を口から吐き操る「炎竜」。 馬よりも速く大地を駆ける「地竜」。 水中を跳ぶように泳ぐ「水竜」。 体内より電撃を生み出す「電竜」など、その特色はもちろん、今しがたルーナが森で捕らえた「言葉を持たぬ小竜」など、知性の高低も千差満別だった。 人族国家を掌る王たちは、より力の強い竜を味方に付けるため、ネゴシエータを生業とする人間を雇い、竜との盟約に利用するようになった。 どの国にとっても、ネゴシエータは国家権力保持の切り札だった。 なぜなら、聡明で凶暴な竜と交渉し、手なずけ、人の国のために力を貸す約束させることができるのは、ネゴシエータだけだったからだ。
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