五月病

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草木の青さが まだ柔らかくて 青い青い 麦畑を泳ぐ柔らかい青い風 その青さに わたしは私を落としてしまった 風がさわぐ ‘もっと遠くもっと遠くへ吹き飛ばしてしまったよ…’ ‘浚ってしまったよ’ ああ さがさなければ わたしは私をさがさなければ きっと この半身のままじゃ この青さしかわたしの瞳には映らない あの薄紅の吹雪を見た瞳は あざやかな白を見た心は この残された半身にはきっと ない だから こぼれ落ちた私を見つけよう この 柔らかい青に飛び込もう どこまでも広がる風のなかで 青い大空を見上げている私を見つけよう 柔らかく纏わりつく青い風のなかで 立ちすくむわたしを ‘見つけて’ …ねえ、風よ …私と一緒にわたしをさがして …青に染まったわたしを
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