第1章

2/4
前へ
/5ページ
次へ
地球は青かった。はるか昔、誰がそんなことを言っていた。そして、今日、私は月から地球を眺めている。コシューと宇宙服から供給される酸素が私の命綱だ。そう思うと、私は宇宙という途方もない地に降り立ったのだと実感できた。奥歯がカチカチと鳴り響き、地面をわけもなく踏みしめる。 宇宙旅行への本格的な研究が始まったのが、やく十年前、コストやさまざまな問題を少しずつクリアしていきながら十年は、長いようで短かった。 子供の頃、地球の地面から空を見上げたとき、その先にある物を見てみたいという子供のような衝動は大人になっても私の中で色濃く、根付き、躍動していた。その先にあるものは、地獄か、天国か、かつての先人達が歩んだ道を私も歩きたいと強く願う。 地球という重力、引力から引き剥がされ、私はこうして月の地面に降り立っている。ちょっとしたことで宇宙は、地獄に代わり、私の棺桶になるだろうが、それよりも降り立ったという感覚が私を震わせた。 『私は、私はここにいるぞ』 いる。ここにいる。誰もがバカな夢だと陰口を叩き、お前には無理だと鼻で笑った。天才でも、秀才でもない、凡才な塊だった私が地球を飛び出した。その事実が私の、両目に涙を溢れさせる。 『これから数多くの人間達が地球を飛び出してくるだろう。そうすれば私はやっと認めてもらえるんだ。やっと!!』 私の夢は、誰もが自由に宇宙に旅立てる船を造ることだった。無計画な夢、叶うことのない目標だった。もちろん、私だけでは実現できなかっただろう。そのテスト要員として、私は地球にやってきた。テストは概ね成功だ。あとは希望者を募っていく予定だ。私の夢が大きく広がっていく。そのときだった、宇宙服のヘルメットにジジッと通信が入り、助手の男の一声が響く。 『調子はどうでしょうか、教授』 『ああ、おおむね最高と言っていいな。お前も出てこいよ』 『それは何よりです。教授、そして、さよなら』 『…………は?』 助手の一声に頭が点になった。さよなら? 『さよならと言ったんですよ。教授』 『おい、悪い冗談はよしてくれ』 『冗談でもなんでもないんですよ。教授。私達が貴女の将来性のない夢に投資してきたのは、全てはこの日のためなんです』 『言ってる意味がわからないぞ。わかりやすく言ってくれ』 『簡単に言うと、近い将来、地球には無数の宇宙人が襲来します』
/5ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加