【3】あなたに何がわかる!

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「尾上様、お届け物にあがりました」  あくまでも私は広告塔。決して態度は崩さず、礼節を失わず……。極力目を合わさないように礼をして。さあ。 「では」  自分を鼓舞し、去ろうとする彼女に、 「お茶ぐらい飲んでいけばいいのに」  といつものように声がかかった。 「いえ、おかまいなく」  いつものように返ってくる答えを鼻で笑う慎は、シニカルな笑みを浮かべている。  私が知らない種類の感情の動きを、人を小馬鹿にするような笑いを、いつ覚えたのだろう。三郎兄と話しているようでイライラする。 「お食事はダメ、お礼も一切ダメ、茶すらお断り。高遠のお嬢様はお高くとまってらっしゃるのだね。それとも、恋人が怒るのかな」  弾かれるように、茉莉花は振り返った。  あなたに何がわかる!  感情を露わにする視線を送ってしまう。一瞬だけど、隠せない心は困惑だ。  私だってどうしたらいいかわからないのに、慎さんならわかるというの! 「まあ、強いて引き留めはしない」  彼女の視線を受けてひるまず、静かに言う。 「迷惑をかけた。ありがとう。もう良いよ」  伏せた彼の視線が痛くて、彼女は逃げるようにその場を後にした。  傷付いたような目をする。  まるで私が悪いみたいじゃない。 ――奥様が、帰る家があるくせに。何故、あなたが?  どうしたらいいか、わからない。  どうか、私を揺さぶらないで。  茉莉花は閉じた扉の向こうで、両手で顔を覆った。
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