第1章

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おおかた家事を済ませ、一息つくと、ふたたび胸に立ち込める暗雲。 私の足が孝太の部屋の前で止まる。茶色の無機質なドアは、私を誘うようにも阻んでいるようにも見える。 部屋には絶対に入るなと言われている。でも…。 そ、そうだ。掃除!掃除機をかけるくらいなら。あの子は埃アレルギーがあるから、掃除機をかけてあげなくちゃ。 そっとドアのぶを回し、息子の部屋に踏み入れる。きちんと整頓された部屋は埃1つ落ちていない。 几帳面でまめな、いかにもあの子らしい部屋だ。 それなのに、机の一番下の引き出しが少し開いているのが不思議だ。 開けたら閉める。出したらしまう。小さい頃、徹底して教え込んだのに。 私は少しだけ微笑ましい気持ちで机の引き出しに手をかけた。 あの子にも抜けてるところがあるのね。
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