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肩から離した俺の手を、ぎゅっぎゅっと握った。
「…だからさ、俺今すげー嬉しい…」
「………」
ふふって笑いながら、俺の指を親指から順に畳んでいく。
その様子を見ながら、俺はつぶやいた。
「…なんで、言わなかったんだよ……」
なんで。
今まで、そんな素振りもなかったじゃん。
「…夏川先輩のことが好きなのかと思ってた。
あの日、更衣室でも言ってたし」
「そ、それは例えとして出しただけで…つーか!あの場でお前が好きとか言えるわけねーし!
お前だって、楽しそうに絡んできたじゃんか!」
「だって…あれは別に、ふざけてただけだし…」
「俺だってふざけてただけだし!
それに、お前もけっこうありって言っただろ、あのとき!」
「それも、確実にふざけて言った冗談な空気だったじゃん!」
「冗談なんかじゃねぇーし!ほんとに好きなんだって!」
お互いに相手の目を見つめあった。
一呼吸おいてから、白木は俺の手へと視線を落として。
「俺のほうが…ずっと前から好きだったし」
ポツリと呟いてから、グーの形に完成させた俺の手首をきゅっと握る。
「……。
俺がお前のこと好きにならなかったら…どーしてたんだよ」
「まぁ、その時はずっと片思いで終わってたよね?」
でもさー。
ゆっくりと俺の手を持ち上げる。
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