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視界の横を流れていく風は、この間よりも少しじめっとして肌に張り付く。
すでに春の爽やかさは消え失せていた。
「なー、のど渇かねー?」
意外とチャリは疲れるもので、かなり汗っぽい。
体が熱くなって、のどがからからしてくる。
財布とケータイ以外、何も持っていないのは冬原も同じで、飲み物なんぞはお互い持ち歩いていなかった。
「…思った」
「じゃー自販よろーぜ。あっこの」
「おー」
…ガチャン
俺のチャリの後ろに同じようにチャリを止めた冬原は、俺の隣に並び自販機と向き合った。
あ、ポカリとアクエリ並んでんじゃん。
どーする、これは…。
ポカ…いや、アクエリアスのが…いやまてまて、ここは最初に目についたポカリで…。
チャリンチャリン…ぴっ、ガションッ
迷う俺の隣で迷うそぶりもなく金を入れた冬原は、落ちてきた飲み物を取るためにしゃがんだ。
…っし、ポカリで!
ぴっ、ガションッ
俺がしゃがんでポカリをとる頃には、冬原はすでにキャップを開けていた。
冬原を見上げてみると、首が痛い。
そもそも、普通に立っていても10㎝以上違うんだ。当たり前だ。
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