8人が本棚に入れています
本棚に追加
貴方の左手には銀色に輝くナイフ。
『この子は私のモノだ』
違う。チガウ。違う……!
この人は僕を助けようとしてくれただけ。
貴方の愚行を止めたいと勇気を振り絞り、この地下へと続く扉を開けてくれただけ。
それなのに……どうして……!
『今宵も楽しませておくれ』
いつものように微笑みながら、貴方は僕に近付いて来る。
その手は美しい人の血で濡れている。
それでもあの日、差し伸べられた大きな掌に僕は縋った。
自らの意思で選んだ。その優しさの裏に歪んだ愛の形しかなくても。
【貴方ハ初メカラ、狂ッテイタノ? ソレトモ僕ガ、貴方ヲ狂ワセタノ?】
だから僕は彼女が遺してくれた切り札を使う。
安全装置を外す。それは解放の合図。
そして、引き金に添えた指に力を込めた。
最初のコメントを投稿しよう!