元凶

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2359年ーー我々人類が科学を最も優れた学問として重要視していた頃、ヴァーデンサミスティーという爆弾が国家宇宙学開明センターで作り出された。当初、それは2113年に法律化した爆発物禁止案に違反するとして、世界各国から非難を浴びたが、ヴァーデンサミスティーの開発に携わった宇宙学者エレミアス・ボーフォートン氏の言葉で一挙に変わる。 「我々がこのような物を作り出したのは、人類を滅亡させる為などではない。人類を守る為だ。そう、ヴァーデンサミスティー、これを使う目的は他でもない」 大勢の群衆の前で堂々と壇上に立つボーフォートン氏は、両手を広げマイクに向かって叫んだ。 「宇宙人を滅亡させるのだ!」 この瞬間、どれだけ多くの人が驚いたのだろう。どれだけ多くの人が我が耳を疑ったのだろう。 ボーフォートン氏の大声に驚き、のんびりと人々の落とした食べ物に舌を打っていた鳩達が、一斉に舞い上がる。群衆の間では、深い沈黙が降りる。長い沈黙ーーその後には。 歓声が上がった。 まずは、4人5人と少人数だったが、その1分後には、その場にいた人々が熱狂の渦に包まれた。 「今こそは我々を実験動物のように扱ってきた奴らを破滅させる時だ!」 群衆がそれに答える。 「奴らをこの地球から追い払うのだ!我等のこの美しく青い星、地球から!」 こうして、割れんばかりの歓声と共に、ヴァーデンサミスティーによる悲劇は始まったのである。
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