第2話

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気のせいか、彼の耳はほんのり赤い。 照れている、と思う。 多分、はじめて見る。 いつもすましている分、余計に意外だ。 「とりあえず連続で原子爆弾が爆発してるって覚えたらいいよ」 「……ぷはっ」 我慢、できなかった。 久しぶりにツボをつかれてしまったみたいで、口元が緩んでならなかった。 この人にでも、恥ずかしくなることがあるんだ。 当たり前のことがこんなにも意外に感じる。 それがまた可笑しくて、更なる笑いを誘った。 ふいに意識は違うところに引き寄せられる。 文句なり野次が飛んでくるはずの横から、気配がピタリと止んでいたからだ。 おずおずと覗き込むように右に目をやると、こちらを見ている彼と視線が交わる。 左胸の奥底で、急速に膨れ上がっていく感覚に襲われる。 「…なんですか」 「いんや、美味しそうだなって」 ………おいしそう? 既においなりさんは完食している。 突拍子もない言葉に、顔をしかめてしまう。 それにニンマリと笑った彼が、どことなくブラッキーに映る。 「な、なにが?」 「もっとそうやって笑えばいいのにってことだよ」 そう紡いだ声色がひどく温かみのあるものに感じた。 この世界に、あたしと彼の二人しかいないみたいだ。 二人の間を横切る気紛れな乾いた風を、頬が捉えたと同時に。 破られたシャボン玉みたく、パチッ…と、何かが弾ける音がした。
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