第2話

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「…笑ってるよ、普通に」 「はは、それもそうだね」 食べ終わったお弁当の箱を袋に入れている先生を見れずにいた。 手の中でおいなりを包んでいたビニールを握りしめて、変な落ち着きのなさを覚える。 「ほい」 太腿の上に、ぽんと置かれたヒビットカラーの袋キャンディー。 期間限定と赤い文字で書かれた下に、桃の写真が載っている。 「?」 「勉強前の糖分補給は大切だよ?中間テスト期待してるんだから」 「それ、すこいプレッシャーなんだけど」 「ははは」 …貰って、いいのかな。 コンビ二でも奢ってもらったのに。 「…"ソレ"食べてるとこ、また見せてね」 「は? なんで?」 「なんでも」 太ももに頬つえをついてる彼は、意味ありげに目を細める。 何がなんだかよく分からなかったけれど、とりあえずは頷いておいた。 差し出された袋にぎゅうぎゅうになった包装紙を入れると、先生は「さて、帰りますか」と言って立ち上がった。 「家、ここから近いんだっけ?」 「うん、すぐそこだから。……今日はありがとうございました」 照れ臭くて俯いたあたしは、"いいえ"とか"気にしないで"とか、彼からそういう返答が返ってくるものだとばかりに予期していた。 しかしコンクリートに落ちていた自分の影に、もう一つの影が急速に近づいてくる、のを尻目で捕らえて。 「お礼ってそれだけ?」
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