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屈み込んで斜め下から急に覗きこんできた先生は、不敵な笑みを浮かべている。
突然縮んだ距離に心臓に肋骨が突き破りそうになり、反射的に後ずさりする。
「え、な、そ、な、え」
な、なにがそれだけなの。
そ、それだけってなんなの。
動揺、困惑、混乱、吃驚。
全てが交わりあった上での、精一杯の問いかけだった。
言葉にならないあたしを凝視しながらおもむろに体を起こした彼は、ふっと口角をあげる。
「気ーつけてね」
出入り口で先生はちょうど、月明かりに照らされている側に立っていた。
おかげで去りゆく後ろ姿が、やけに鮮明にうつる。
閑散とした公園に慣れてしまったせいだろうか。
心臓は落ち着くことをしらず、心拍音は耳許で聞こえているような激しさだ。
…あんな感じだった?
なんていうか、なんていうの?
もっと、爽やか?じゃなかった?
こう…イイ人って感じ?だったくない?
わかんない。
わかんないんだけど。
なんか違うくない?
とにかくなんか違うくない?
こう、なんていうのかーーー
「ーーー…ま、いいか……」
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