第11章

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『…怖いのよ。直の事好きになって…でもきっと私は直を疑ってしまうの。直の事信じてやれなくて…直を傷付けるだけなんだよね。自分が傷付きたくなくて、直を傷付ける。』 おつまみを開けてテーブルに広げた。 「付き合ってみなきゃ分からないじゃない。ホスト君は、侑李と居るとき全然ホストっぽくなかったんでしょ?だったら、そのホスト君を信じてみれば良かったじゃない。」 『…私もね。そう思った時もあったのよ。ホストは仕事だって。逸早く夢を叶える為の手段なんだって。直は割り切って仕事してるんだってさ。そう思ったりもしたのよ。』 言ってグビグビとビールを呑んだ。 「そこまで分かってるのに何でよ。」 『…昨日ね。たまたま入ったカフェでさ。ホストとして客に接してる直に初めて直面したのよ。私の後ろの席でね。客と会話してるの全部聞こえてきて。客に甘い台詞言っててさ。大好きだって。平気で言ってた。何かそういうの聞いてたら吐き気がして。仕事だって。直は割り切って仕事してるんだってさ。そう思うのに。なのに、私は嫉妬した。直に気付かれて。私、直に凄く酷い事言って。だから、もう直は私を最低な女だって思ってるわ。実際、最低なんだけどさ。出逢った時から私は直を傷付ける様な事しか言ってなくて。それでも直は私を好きだって言ってくれてたのに。私はね。きっと恋愛なんて出来ないんだよ。愛しても自分が傷付きたくなくて酷い事しか言えない。愛されるのも信じてやれなくて相手を傷付ける。どうしようも無いよね。本当。自分でも嫌になる。』 本当、嫌になる。
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