315人が本棚に入れています
本棚に追加
「じゃあ何で同棲なんてするのよ。それなら最初からしなきゃいいでしょ?相手だって少しは期待しちゃうわよ。その気が無いなら早めにどうにかしなさいよ。ホストと言えども可哀想よ。」
渚も立ち上がり私に向き合って言う。
『…分かってるわよ。』
「無理なら無理だって。突き放す方がいいわよ。変に期待させるのは酷だわ。」
そう言ってスタスタと歩いて行く渚の後ろ姿を見て溜め息をついた。
…分かってるわよ。それくらい。
何だか渚に責められている様で気分が沈んだ。
学校も終わりバイトへと向かう。
バイトに入ってしばらくすると客が入ってきたのに気付き水を準備した。
水とメニューを持ち席に持って行けば
「侑李。お疲れ。」
『…直。どうしたの?』
直だった。
「何か侑李に会いたくて。朝しか顔見れないし。侑李って、バイトの休み無いの?」
ニッコリ笑う直に視線を反らし水とメニューをテーブルに置いた。
「侑李?」
『…あのさ…明日の朝でいいんだけど。少し話あるから。』
渚の言葉が頭に浮かぶ。
「…ん。分かった。何なら早く上がって帰って来ようか?」
『…いや。いいよ。仕事でしょ?明日は私ゆっくりだし。だから、朝でいい。』
「分かった。珈琲ちょうだい。眠気覚ましに。」
そう言って笑う直に頷いてその場を足早に去った。
珈琲を飲みながら直は誰かと電話をしていて。
きっと客だろう。
じゃ、7時に。って約束をしている声が聞こえた。
客と同伴か。
何て思いながら胸の辺りがギュッっと締め付けられた。
……やっぱり無理だな。
最初のコメントを投稿しよう!