第10章

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直が出て行って2週間。 本当なら今のタイミングで答えを出すつもりだった。 あのまま直と過ごしていたら、私はどんな答えを出していたんだろう。 きっと答えを出せないまま、直を苦しめてしまったかもしれない。 そして、私も苦しんでいたのかもしれない。 お互いの為にこれで良かったんだ。 早く離れて良かったんだと自分に言い聞かせた。 今日はバイトが休みで、たまには気分転換に買い物に出ようと一人で街に足を運んだ。 大きなショッピングモールで洋服を見たりアクセサリーを見たり。 別に欲しいものとか無いんだけど、ただ見て歩くだけで気分が晴れた。 少し歩き疲れてモール内のカフェで休憩。 アイスカフェオレを注文して休んでいると 「やだ~。尚夜ったら。相変わらず面白いのね。今日は何が欲しい?時計?スーツ?何でも欲しいもの買っていいわよ。」 私の席の後ろから聞こえる女の人の声。 その聞き覚えのある名前にまさかなと思いながら次に聞こえた声に固まった。 「そんな。何も要りませんよ。陽子さんと居れるだけで。今日もこの後は店に行きますよね?」 ……直…。 初めて客と接するホストの直に直面した。 「当たり前よ。今日は早い時間からデートしてくれたんだもの。勿論、お店で貢献させて貰うわよ。それより、何かプレゼントしたいからちゃんと考えてね。」 嬉しそうな女の客の声。 「ありがとうございます。陽子さんにはいつもお世話になって助かってます。俺、最近フラれたんですよねぇ。で、引っ越したんで何か家具が欲しいですねぇ。って、甘えすぎですね。」 …引っ越したんだ。 嫌でも聞こえてくる後ろからの会話。 「嘘ばっかり。尚夜をふる女なんて居ないでしょ。家具なら一式揃えればいいじゃない。私が買ってあげるわよ。」 「本当ですか?嬉しいな。陽子さん大好きですよ。」 ……やっぱりホストだ。 その後の会話でも鳥肌の立つような甘い台詞を次々と吐くホストの尚夜に吐き気がした。 ……私の判断は間違ってなかった。 その場に居るのが苦しくなって立ち上がり会計へと向かった。
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