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でもそんな清い不倫も続きはしなかった。皆が私達の間柄に気付き始めた。勿論オフィスでキスをしたり手をつないだりなんてことはしなかったけど、距離感みたいなもので伝わるものだと思う。私が他の上司にミスを指摘されたあと彼が目配せをしたり、給湯室で二人きりになったときの間隔が少し近かったりしたり、そんな仕草や距離で私達の関係に気付いた。私達の噂は社内公認の秘密になり、ある日、人事部長に私と課長が内密に呼び出されて、頭を冷やせと怒鳴られた。その場で言い渡されたのは彼の地方の下請け業者への出向だった。つまりは会社は私と彼の間を引き離しに掛かったのだ。 私達は話し合った。課長の異動先は新幹線を使っても半日は掛かる遠地、会うにもお金も時間も掛かりすぎる。課長は別れると言い出した。元々道ならぬ恋、私の人生のためにもズルズルと不倫関係を続けるのは得策ではない。新しい恋を見つけて、新しい道をと彼は言った。私は反対した。会社を辞めて彼について行くと申し出た。離れたくなかった。 結局は別れると決めて、課長を見送ったけれど、その後も逢瀬は続いた。彼が本社出張の際にはうちに寄った。出張がなくても奥さんに嘘をついて泊まりに来てくれた。嬉しい半面、私は寂しさに襲われていた。彼には家族があり、私との逢瀬が終われば家族のもとに帰って行く。決して彼が私を性欲を吐き出すための道具だなんて思ってはいない、奥さんがいても奥さんを大切にしていても、私を、ちゃんと愛している。愛の方向というか性質が違うんだと確信はしていた。なら、私はその方向でいい。私は私なりの方法で彼との絆を手に入れたいと思うようになっていた。
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