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奥さんに出張だと嘘をついて泊まりに来てくれた夜、彼はいつものように私を抱いた。ピルを服用してると知ってる彼は避妊具は使わない。その晩も私の中にそのまま放出してぐったりと上半身を私の体に乗せた。汗ばむ肌、耳に掛かる息、私の中で彼がヒクヒクと動く。気持ち良い?、と彼に聞くと、うん、と頷く。既に二人の子供を設けている奥さんにはちゃんと避妊具を付けているらしい。生は良いね、彼は言う。生なら他の女の子でもいいの?、と茶化すと、里香だからいいんだ、と囁く。里香こそ他の男としてないだろうね、と私の髪を梳きながら言う。当たり前です、と答える。
好き……好き。奥さんと別れて私と結婚して欲しい。この人の奥さんになりたい。毎日毎晩一緒にいたい。そんな正直な気持ちを押し隠して、私は彼の背中に手を回す。こら里香離せよ、もう少しこのままでいて、流れてシーツを汚すよ、洗濯するから気にしないで。彼がクスクスと笑ってキスをする。その優しいキスに応じる。もしかしたら今夜が最後の夜かもしれない、そう思いながら私は切ない気持ちでいっぱいだった。
翌朝、彼を見送る。そのとき私はおなかの中で何かが光るのを感じた。下腹部に両手を当てる。この予感が“いい予感”でありますようにと祈る。彼が怪訝そうな顔をするけど、私はニコリと笑ってごまかした。きっと今日が最後になる。私は再び彼の唇に自分の唇を重ねて深く深くキスをした。
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