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次の日―――
「遅い!いくらなんでも、もう10時だろ……」
フォークリフトで朝の荷を積み込みながら、俺は時計を何度も見ている。
新入社員様が来ると言う話は、朝会で社長直々に発表してくれたが、肝心の本人が来ないんじゃ話にならない。
「いってらっしゃ~い」
そんな中、呑気な女性の声が聞こえ、車のドアが閉まる音がした。
見ると、25歳くらいのスーツを着た男が、母親らしい車の女性に手を上げていた。
「もしかして……アレ?」
男はダルそうにあくびをしながら事務所へと入って行く。
しばらくすると、俺の名前が放送で呼ばれた。
「やっぱ……っぽいな。手強そうだな」
肩を落としトラックのドライバーに納品書を渡し終え、重い足取りで事務所へと入って行った。
事務所では事務員さん達が社長室を指差しうんざりした顔をする。
中からは外まで『そんなの聞いてない』だの『ママは言わなかった』だの喚いている声が聞こえる。
「まずは現場から入ってもらう」
「やだよ!肉体労働なんて、僕のキャラじゃない」
ノックする手も躊躇する俺に、年配の事務員さんが『頼んだわよ』と声かける。
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