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どす黒い雲が分厚く空を覆い、今日もこの時期ならではの長雨だ。
「かあっ……鬱陶しいのな……」
フォークリフトを操り、トラックに今朝の荷の積込みを済ませ空を見上げた俺を、事務所から社長が手招きする。
「はい」
「ちょっと来て」
いつもは古狸さながらのズル賢そうな顔をしているくせに、今日はやけに陽気だ。
それに、普段なら放送で呼ばれるか、若い事務員さんが呼びに来るのに……
社長自らとか、どんな風の吹き回しだよ?
事務所へと入ると、奥の社長室へと連れて行かれる。
どっぷりと肥えた尻を振りドスンとソファーに埋まるように座ると、鏡餅のような腹を撫でながら俺に向かいのソファーへと着席を促す。
会社の帽子を作業服の胸ポケットにいれ、俺は社長の向かい側へと腰を下ろした。
「もうウチにきて何年だ?」
「えと……27からでしたから……十二…いや、もうすぐ十三年になりますね」
高校を出てから職種にこだわらず、俺は色々あってあちこちの会社を転々とし、やっと今の会社に落ち着いた。
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