.:*:。 タチの男・゚:*:・'°

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「君はウチに入った頃から、なかなか仕事の覚えも早く、若いのにベテラン社員に負けない器用さと理解力があったからな」 「先輩方に恵まれただけです」 一歩引いた返事を返しながら、俺は内心嫌な予感がしていた。 社長は叩き上げの昔人間な部分が強く、社員を大事にしてくれてはいるが、正直厳しいところもあるのだ。 ヘタをすれば、今の世の中、パワハラで訴えられかねないキツさの時もある。 それでも事務所以外は男ばかりの職場だから、どうにかこうにか若手の新入社員でも根性のあるやつは残っている。 そんな社長がわざわざこの俺に話ってなんだ? 「実はな、私の妹の子なんだが……大学を出てもチャラチャラと浮わついた毎日で、地に足を付けずフラフラしておってな。25も過ぎたことだし、いいかげん定職に就けと親に言われても、どこも長続きせんのだ」 「は……はあ…」 「君もそんな時代を経て今があるわけだし、どうだろうか?」 社長は身を乗り出し微笑む。 「何が“どう”なのか……」
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