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「……大丈夫ですか? 近江さん、ものすごい落ち方してましたけど……」
眩しくて目頭を押さえていたのを泣いているとでも思ったのだろうか、彼女は控えめに戸惑ったような声を上げた。
いや泣いてないし。
「平気平気。ちょっと膝擦りむいただけだから」
彼女はそれに対しそうですか、とにっこり笑い、そして思い出したように急に真剣な顔つきになった。
「ところで午前中はもう終わりで、これから昼休みになるんですが……近江さん、お昼ご一緒してもいいですか?」
「うん? 別にいいけど。親戚の人とか小夜さんとかがいるのが気まずくなければ」
「ええ、それは平気です。一度きちんとお礼を言おうと思っていましたし。それより……」
彼女がそう言いかけたとき、僕の携帯の着信音が鳴った。
タイミングが悪い。
「ごめん、ちょっと待ってて……はい。もしもし……」
そう応対したところ、ぷつんっと電話を切る音がした。
なんだよ、いたずら電話か。
「誰からでした?」
「ん? いや、いたずら電話。最近多いんだよ」
「そうですか。気を付けてくださいね、近江さん」
「ああ……まあでも昔からよく自宅にはいたずら電話が掛かって来てたから、ちょっと慣れちゃってるところはあるんだけどね。……ところで、何か言いかけてたけど何だったの?」
「いいえ、なんでもありません」
そう言って、彼女はにっこりと笑った。
「……近江さんは私が守ります」
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