第1章

3/4
前へ
/4ページ
次へ
 開会式が終わり、種目の順番が来るまではだいぶ暇である。僕は下敷きで煽いだり、スポーツドリンクを飲んだりしてだらだらしていたが、所属する赤組が劣勢になってくるとそういう訳にもいかない。 「ほら、彼方もちゃんと応援して!」  なんて席を立たされて、声援でワイワイしている前方へと押し出される。  ひー……なんて不快指数なんだ。  人口密度が上がって、余計に暑い。  何故か愛想よく手を振ってくれる見知らぬ後輩に手を振りかえしつつ、周りに合わせて適当に応援をしていると、並んでくれとの号令が掛かり今度はそっちへと流される。  慌ただしいなあ……。  二年生の競技は全五種目で、リレー・騎馬戦・ドッジボール・ソーラン節、そして組体操という順番になっている。もちろんこれは全員参加のものだけだから、運動神経の良い人たちはクラス選抜という形でスウェーデンリレーやら更にたくさんの競技に出なくてはならない。  それはまさに、息つく暇もないだろう。  僕はと言えば運動神経とは無縁の存在なもので、全員参加のものしか出場していないのだが、それでもリレーでは追い越され騎馬戦では鉢巻を取られ、挙げ句に騎馬が崩れて落下し、医務室に運ばれるという失態を演じた。  対して佐々さんはと言えば、リレーでは韋駄天の俊足で驚異の三人抜きを果たし、騎馬戦では騎馬役だったもののルンバのごとく滑らかな移動技を見せ、彼女のいた騎馬は敵クラス全員の鉢巻を奪い去って見せたという大活躍ぶりであった。  佐々さん、運動神経いいんだな。おしとやかそうに見えるからそんな感じしなかったんだけど。  医務室で擦り傷の手当てを受けながらそんな感想を抱いていると、赤組の拍手喝采を受けながら佐々さんがこちらへ向かってくるのが見えた。  心なしか、威風堂々が聞こえてきそうな気がする。  あれ、なんでだろう……眩しすぎて、目が……。
/4ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加