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三日前、友達の坂本は就職先の農家が決まった。
二日前、何も無かった。
昨日、テレビに出始めの女性新人歌手が、余命を迎えた。
そして今日、俺は高校を卒業した。
落名の危険は何度もあったが、全て乗り切り、俺は無事普通科の高校を卒業した。
最後の一年間を過ごした空中第二十五号教室への箱型エスカレーターに乗って、物凄く長い時間をかけて、最後の教室に向かう。
それはたまたま。
本当にたまたま。
俺が乗り合わせた箱型エスカレーターの狭い一室に、あの人と一緒に乗り合わせた。
そこはエレベーターのように狭く、そこには俺逹二人しかいない。
「やあ」
「やっほ。新谷君、目赤いよ」
「うんと泣いたからな」
「そうだね。私もうんと泣いた」
「なあ、一緒のエスカレーターに乗るの、これで何回目だ? 俺逹」
「知らないよそんなの」
「記憶力で有名な真波なのに?」
「覚えてるわけないじゃんか」
「……そっか」
「そうだよ」
「真波はこれから何するんだっけ?」
「私はこれからCAだよ」
「キャビンアテンダント? 普通科出身なのによくなれたなぁ」
「まあ記憶力だけが取り柄だから」
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