第1章

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純子は早速、創作に取りかかった。 原稿用紙に書く事は出来なかったものの頭の中で、今まで温めて来たストーリーは何編がある。 その中から、小説教室で知り合った初老の男性と恋仲になり、しかし糖尿病を患う男性が不能な為、 身体の関係は持てず「純愛」を通す既婚の三十代女性の話を書く事にした。 やはり、銀行員だった純子の父親は仕事が忙しく、純子や純子の弟との関わりを放棄したかの様に少女時代の純子の目には映った。 子供の時に父親からの愛情が不足していた純子は、自分がファザコンだと自覚している。 父親のような年齢の男性を慕う気持ち、それが上手く描く事が出来たなら、寂しかった子供時代の呪縛から解き放される、純子はそんな気持ちがした。 しかも父親位の年齢との男性とのプラトニックな恋。 肉欲を伴わない恋愛が究極の愛だと、純子はそう信じて疑わない。
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