第1章

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純子は今日も文章を綴る。 作品は、何故まだ若く美しい人妻が、不能の寡に執着するのか、その真実が明かされる山場に差し掛かっている。 書いている純子自身ですら、緊張して喉が乾く。 そう言えばいつもと違って身体も火照っているようだ。 純子は、顔を洗って熱を冷まそうと洗面所に立った。 三面鏡仕様のミラーの奥には、愛用の化粧品の数々がしまわれているが、純子は家にいる時は殆ど化粧はしない。 鏡の中の純子は自分が色白で、まだ顔の輪郭も弛んでいないと確認した。 そして、熱の為かいつもより、自分の瞳が潤んでいる事に気づいた。
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