第1章

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kenjiの作品 「如何ですか?」 宝石屋店主は、小さなライトをそのキャッツアイに当てると理恵の顔を覗き込んだ。 「わァ」 くっきりと、石の中央を走る一条の線が浮かび上がり、理恵は思わず声を上げる。 「素晴らしいでしょう? 私も長い間この仕事をしていますが、こんな凄いシャトヤンシーを見るのは初めてです。それに見て下さい、この色、この蜂蜜色は…」 宝石屋が言いかけた時に、機種変更したばかりの理恵のスマホが震えた。 「ちょっと待って下さいね」 、と断って画面を読むと、つい数日前に友人から紹介されたばかりの田村からメッセージである。 「田村です、先日は楽しかったですね、ありがとうございました。 ところで、理恵さんは、お兄さんが新しく事業を始められて新規の顧客を探しているとおっしゃっていましたね、心当たりがあるのですが、お茶でも飲みながらお話ししたいと思います。 ご都合宜しければ、来週の火曜日、綾瀬の駅前のホテルココロイヤルのロビーに午後の2時に如何でしょうか? お返事お待ちしております。」
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