淫靡な夜

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***  夕飯は、直ぐ傍の牛丼屋で済ませていた。 (つか、安田課長のあの細身の体に、特盛りと並盛り一膳ずつがペロッと入ったのが不思議。僕は大盛りでいっぱいだったのに……) 「はあ、疲れた……。ほら下田ぁ、ホテルで打ち上げするから、さっさと酒を選べ」  コンビニに入った安田課長がオレンジ色の籠を手に持ち、お菓子売り場から顎でドリンクコーナーを指す。正直お酒、苦手なんだよなぁ――  顔を引きつらせながら呑めそうなものを渋々選んで、そっと籠に入れた。  籠の中には既に、おつまみらしきものがごちゃっと入れられている状態。(しかも大量なんですけど!) 「おい、何だこれ? ピーチサワー?」 「あ、はい……。桃のお酒ですぅ」 「そういやお前、接待のときにいつも隅っこにいるよな。目立たないようにして」  言いながらピーチサワーを手にしたまま、さくさく歩いて、それがあった場所に辿り着くと勝手に戻されてしまった。 「あっ――!?」 「目立たないようにしているのも、呑まされない様にしているからだろ。もういい年なんだから、少しは酒が呑めるようになれ、下田」  500mlの生ビール缶を何本もぽいぽい籠に入れて、さっさとレジに行ってしまう。 「うひぃ、アレを呑まされるのか。だったら――」  呑まされる前に呑ませて酔い潰してやる!! そして安田課長を食べてやるんだ、絶対に!!! 「あっ僕、荷物持ちま~す」  がさがさ音を鳴らしている袋を手早く取り上げ、ラブホテル街に足を運んだ。  内心、ドキドキしているであろう下田を他所に、慣れた感じで視線をアチコチに飛ばし、ラブホテルを物色している安田課長。 (今夜一晩、下田と一緒に過ごすのか――)  こっそりとため息をつき、どことなくハイソな概観をしている建物前で立ち止まって、下からそれを見上げてやった。
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