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夕飯は、直ぐ傍の牛丼屋で済ませていた。
(つか、安田課長のあの細身の体に、特盛りと並盛り一膳ずつがペロッと入ったのが不思議。僕は大盛りでいっぱいだったのに……)
「はあ、疲れた……。ほら下田ぁ、ホテルで打ち上げするから、さっさと酒を選べ」
コンビニに入った安田課長がオレンジ色の籠を手に持ち、お菓子売り場から顎でドリンクコーナーを指す。正直お酒、苦手なんだよなぁ――
顔を引きつらせながら呑めそうなものを渋々選んで、そっと籠に入れた。
籠の中には既に、おつまみらしきものがごちゃっと入れられている状態。(しかも大量なんですけど!)
「おい、何だこれ? ピーチサワー?」
「あ、はい……。桃のお酒ですぅ」
「そういやお前、接待のときにいつも隅っこにいるよな。目立たないようにして」
言いながらピーチサワーを手にしたまま、さくさく歩いて、それがあった場所に辿り着くと勝手に戻されてしまった。
「あっ――!?」
「目立たないようにしているのも、呑まされない様にしているからだろ。もういい年なんだから、少しは酒が呑めるようになれ、下田」
500mlの生ビール缶を何本もぽいぽい籠に入れて、さっさとレジに行ってしまう。
「うひぃ、アレを呑まされるのか。だったら――」
呑まされる前に呑ませて酔い潰してやる!! そして安田課長を食べてやるんだ、絶対に!!!
「あっ僕、荷物持ちま~す」
がさがさ音を鳴らしている袋を手早く取り上げ、ラブホテル街に足を運んだ。
内心、ドキドキしているであろう下田を他所に、慣れた感じで視線をアチコチに飛ばし、ラブホテルを物色している安田課長。
(今夜一晩、下田と一緒に過ごすのか――)
こっそりとため息をつき、どことなくハイソな概観をしている建物前で立ち止まって、下からそれを見上げてやった。
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