淫靡な夜

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「早く一緒に入りましょうよ、ほらほらぁ」 「ぉ、おう……」  ビール片手にいそいそ入り込んで、下田に背中を向けた。浴槽がそこまで広くない故に、向かい合って入るのは勇気がいる――いろいろした後で、今更なんだが。  赤面しながらリングプルを開け、グビグビっと勢いよくビールを呑んだ。 「キレイな肌、してますよねぇ」  つつっと背中を撫でられ、手にしているビールを落としかけた。 「っ…とと! お前、いきなり触るなよ」 「だーって、誰かさんがイジワルして、こっち向いてくれないんですもん」 「……お前の顔を見ながらビールを呑んだって、ツマミにもなりゃしないからな」  チッと舌打ちして、再びビールを口にする。 「いいなぁ……僕もビール呑みたいかも」  呑めないクセに強請ってくるとか、何なんだコイツ。 「ほらよ。呑めば」  下田の目の前にビールをかざしてやると、ふるふると首を横に振った。 「このままじゃ美味しくないっす。安田課長から直接戴きたいな、と」 「はあ!?」 「美味しいビール、口移しで呑ませてくださいよ」  離れていた体を引き寄せるように、腰に手を回してくる。 (やめてくれ……これ以上の接触は遠慮したい) 「男同士なのに、口移しなんて。そんなの……」 「今更、そんなことを言うなんて。僕の一突きでひーひー言いながら身悶えていた人が言う言葉とは、到底思えませんね」
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